書道の豆知識

『筆』について

お習字をするには、筆、硯、墨、紙が必要です。これを書道用語で文房四宝(ぶんぼうしほう)といいます。書道は中国から伝わってきました。中国製のものには唐(とう)をつけて唐筆・唐硯・唐墨・唐紙と呼び、日本製の物には、和(わ)をつけて和筆 和硯・和墨・和紙と呼びます。

***筆のはなし***

一. 穂先の形状 ・・・・筆を購入する時の穂先の形状は、「固め筆」と「捌き筆」に分類されます。 固め筆とは、穂先がふのりで固めてあり、円錘状になった一般的なもの。 捌き筆とは、穂先が固められていなくてひろがった状態の筆を言います。

二. 穂首の太さと長さ ・・・・穂首の太さによって「大筆」「中筆」「小筆」に分類されます。 穂の太さ(直径)がだいたい10㎜以上のものが「大筆」、8㎜~9㎜が「中筆」 5㎜~7㎜程度のものが「小筆」とされています。ただしこれは、製造元によっても 異なってきます。 穂の長さが、大変短いものを超短鋒筆、短鋒筆、中鋒筆、長鋒筆、超長鋒筆にわかれます。 穂先が長いもの(超長鋒筆)になっていくほど、扱いが難しくなり、熟練した技術が必要に なってきます。

三. 新しい筆のおろしかた ・・・・固め筆をおろす時、無造作に押しつぶすようにする事は決してしてはいけません。 小学生の頃、筆を半分だけおろして書きましょう、と言われたことがあるか、と思いますが、 これもお勧め出来ません。筆はぬるま湯か水に浸しておき、筆全体のふのりが落ちて自然に 毛がほぐれていくのを待ちましょう。全体がほぐれたら、布や柔らかい紙などでそっと水分を とってあげるといいですね。 捌き筆も、毛はほぐれていてもふのりが使用されていますので固め筆同様、短時間でよいので 水かぬるま湯につけてふのりを落としましょう。


四. 筆の手入れと保存方法 ・・・・筆を使用した後の手入れの仕方によって、寿命が大きく変わってきます。使用後は必ず水で 洗い、墨を落としましょう。一番理想的な保管方法は、筆をつるしておく事です。こうする事に よって穂元に水がたまらないので長持ちします。横に寝かせておいてもよいでしょう。 長期間保存する場合も、日常の保管方法と同様、つるしておくとよいでしょう。箱に入れてしまって おくとカビが生えたりします。

五. 筆の毛の種類・・・・
  1. 羊毛→字の通り、羊の毛で出来ています。非常に毛が柔らかいので大変扱いにくいものです。他の獣毛に比べて毛が細く、柔らかいので墨を非常に含ませやすいです。
  2. ウサギ→紫毫(しごう)ともいわれます。毛がやわらかく、フワフワしています。
  3. 鹿→毛は柔らかい方ですが、羊毛より硬い毛です。
  4. 狸(たぬき)→毛は強く弾力があります。剛毛です。たぬきの胴の部分と、尾の部分を使用します。
  5. 馬→馬は全体の毛を使用できますが、特に尻尾が重宝されています。
  6. いたち→尻尾の毛を使います。弾力があります。
  7. てん→尻尾の毛を使います。
  8. 鼠→小さい字を書くときに使います。
  9. 鶏→フワフワして広がった感じです。

**書を学びだすと、様々な筆を使って書きたくなります。初心者が筆を購入する場合、羊毛の筆を選ぶ事はやめましょう。柔らかい毛と硬い毛が混ざった「兼毫筆・けんごうひつ」で「中鋒筆」か「長鋒筆」を選ぶと良いでしょう。上達してきたら、毛質、穂の長さもかえて挑戦してみるといいですね。そうすると筆によって線質が違ってくる事がわかってきます。書は、字の形だけにとらわれず、いい線を引けるか引けないか、が重要なのですから。

さあ!色々な筆を使ってたくさん字を書いてみましょう。きっと書きやすい筆に出会える事でしょう!

弘法は筆を選ぶ

(弘法は筆を選ばず)ということわざは、よく知られています。筆には楷書用・行書用・草書用・写経用と書くものによって製法も異なります。大きな文字、小さな文字、そして色々な書体があるのに全て同じ筆で書くことは難しいですよね。 当然筆を変えたり、様々な種類の筆を使った事でしょう。ですから本当は(弘法は筆を選ぶ)のです。子供の場合も、きちんとした筆を使わせる事が上達への第一歩でしょう。

筆のお手入れ

大筆を初めて使う時は、糊を水でしっかり落としましょう。めやすは毛の中に硬い所がなく柔らかくなっている事です。使い終わったら墨をよく洗い落とします。そして毛先を綺麗に真っ直ぐにまとめ乾かします。 毛を全ておろすと扱いが難しいですが、色々な線を出す事が出来ます。

筆の持ち方

  1. 単鉤法(たんこうほう)→人差し指を筆にかけて書きます。細字書きに適しています。
  2. 双鉤法(そうこうほう)→人差し指と中指を筆にかけて書きます。中字や大字に適しています。

紙について

にじみの多い紙は、かすれがでて味わい深い線が出来上がります。墨の量を調節すると趣がでてステキな仕上がりになります。

硯について

硯は中国製の端渓硯(たんけいけん)や、きゅう州硯(きゅうじゅうけん)が有名です。品質の よい硯ですった墨は、色が美しく香りも良いのです。

文鎮

紙を押さえる事が出来ればよい、という考えもありますが、やはり重たい物の方が使い心地がいいようです。ずしりと重たい文鎮を紙に載せると気持ちも引き締まるもの。何種類もの文鎮を持って比べて、自分に合ったものを見つけましょう。

水差し

書道セットを買われると入っていますね。いつも使わないのになぁと思われているかも知れません。教室には豊富に水が用意されている事と思いますが、水差しには容器の半分程度は準備しておくと便利です」濃い墨汁を使った時に、線がかすれやすい、バサバサになってしまう、ということがありませんか? これは墨の濃度のせいかと思われます。墨(または墨汁)に少し水を入れて伸ばしてみましょう。 水差しがあれば適度な濃さにいつでも調節できますね。

下敷

下敷は出来るだけ厚みのある物を選ぶといいですね。そして折シワが出来て困ったらアイロンをかけてみましょう。とても使いやすく変身しますよ。日頃から丸めたりせずに、フワッと2つ折程度にしておくと慌てずに書くことができますね。 これは墨の濃度のせいかと思われます。墨(または墨汁)に少し水を入れて伸ばしてみましょう。 水差しがあれば適度な濃さにいつでも調節できますね。